食の安全が、味わいさえも左右してしまう。それがレトルト殺菌機です。調理後に袋や缶に詰めてから行われる、高温での殺菌。そのあまりに高い温度での加熱は常温での長期保存を可能にする一方で、繊細な味付けや風味、食材の食感を壊してしまうことも。450日以上かけてじっくり飼育した種鶏※1の加工、調理を担うエヌチキン様が、お選びになったのはミウラでした。スプレー式※2の「レトルト殺菌機JQ」。ボイラを通じて磨いた蒸気の技術、つまり熱と水の技術を駆使した製品です。熱水を食品のすみずみまで均一に噴射し、こだわりの味を守りながら、温度のムラを抑えた安全性の高い殺菌を実現。
食品業界をワク沸クさせる技術を生みだす。
殺菌だけでなく、解凍、加熱、冷却といった、加工食品の製造をトータルに支えるミウラの使命です。
※1 肉用鶏や採卵鶏の親となる鶏のこと。硬く締まった肉質が特徴。
※2 スプレー式の他、貯湯式、蒸気式もご用意しています。
薩摩の小京都と呼ばれる、鹿児島県南九州市知覧町。この地に本社を構えているのがエヌチキン様です。鶏の産地でありながら一大消費地でもある珍しい地域である南九州で、同社は成鶏の処理・加工に取り組んでいます。200万羽もの種鶏や600万羽もの採卵鶏の卸業、独自ブランド「味なとり」の九州一帯のスーパーや百貨店などへの展開、香港やベトナムなどの海外への輸出、さらにはイスラム教徒向けの食品ハラルフードの供給。次々と新たな挑戦を始める同社の食品加工場では、ミウラのレトルト殺菌機JQが稼働しています。
株式会社エヌチキン本社食品加工場
設立/2001年(2012年に増設) 所在地/〒897-0302 南九州市知覧町郡3669番地
鹿児島のたたきや宮崎の炭焼きなど、南九州には豊かな鶏文化があります。エヌチキンは人と人とのつながりを大切にしながら、地の利を活かし30年の月日をかけて少しずつ成鶏の扱いを増やしてきました。特に種鶏は、日本ではブロイラー6億5千羽に対し、わずか500万羽しか存在しないため、私たちが約40%を担っていることになります。種鶏は50日前後で集荷されるブロイラーと違い、450日以上もの時間をかけて飼育された鶏です。一般的に肉の旨味は飼育期間に左右されるため、手間をかけてじっくり育てた種鶏は、鶏肉本来の細やかさやコク、固さを楽しめます。その独特の食感を、ぜひ私たちのブランド「味なとり」で多くの人に体験してもらいたいです。
国内でハラルを扱っている会社は少なく、観光にきたイスラム教徒の方がホテルなどでも食事に困ってしまうことがあるそうです。一方で私たちも日本人が好んで食べる傾向にあるモモ肉に比べ、胸肉の扱いには余剰感がありました。そこでハラル認証を受けることにしたのです。イスラム教徒の屠殺人や1年に1度の検査、確かな衛生基準など、厳格な審査に対応し、2012年には専用工場を増設しました。今はまだ国内のみの出荷ですが、ゆくゆくはイスラム圏への輸出をめざしています。
これまでレトルトパウチや缶詰の食品の殺菌工程は外部協力先に委託していましたが、それを自社で行いたいと考えました。また鹿児島・伊集院工場で行っていた缶詰製品の殺菌を見直し本社の加工場で実施する意図もあったのです。ミウラとはボイラを導入してからの付き合いになります。ボイラでは他社と価格や性能を比較した上で導入したのですが、きめ細やかなメンテナンスのおかげか、約13年間一度も問題はありません。そうした信頼関係や日々の誠意ある対応を評価し、レトルト殺菌機もミウラに相談しました。
シミュレーションテストで性能に納得したからです。事前に商品のサンプルをミウラの本社に送り、安全の基準となるF値※が商品の中心温度でも得られるのかを緻密なデータをもとに確認しました。また、同じ温度で殺菌しても商品のタレによっては味や色味が変質してしまうことがあります。タレは私たち独自の味付けを支える重要なものなので、商品ごとに最適な殺菌温度を見極める作業を行いました。殺菌後は35℃の部屋に商品を2週間放置するなど、味と菌の状態をさまざまなテストを通じて検証を重ねたりもしました。
タッチパネルでの操作は便利ですね。F値も画面でモニタリングできるため安心です。もちろん味付けも守られています。また、クーリングタワーと連携できる循環型のスプレー式を選定したのは、省エネの観点だけではありません。本食品加工場では約900トンもの多量の水を扱っているため、浄化槽の維持管理を重視しました。クーリングタワーの水分析においても、最初に定めた濃縮倍率を薬注装置で制御できていると実感しています。
レトルト殺菌機の導入後、商品開発用に小型の真空冷却機を、次いで2013年8月にハラルフード用に中型の真空冷却機を導入しました。どちらも私たちが望む性能基準をクリアしたことが選定を後押ししました。私たちの加工場では温めたり冷やしたり、すごく非効率的なことをしています。鶏を温めて脱毛し、内臓を抜いて冷却水につけ、次は調理のために焼き、その後また冷やし、殺菌のために加熱する。これらの工程は安全のために省けないし、衛生管理はこれ以上やればいいというラインは存在しません。だからこそ、各工程の機器に対する信頼は非常に重要です。機器以外でも、細菌検査は自社で行い、鶏の病気などについては定期的に勉強会を実施して知識を共有するなど、衛生管理を徹底しています。
グローバリゼーションが進む畜産業界において、えさにまでこだわり家畜を育てたり、トレーサビリティを実施したり、独自に安全基準を設けたりするなど、日本の企業は安心のために時間や費用をかけています。消費者の皆様の「安い物を買いたい」という気持ちはもちろんわかりますが、安全という観点から適正に判断してもらえたらと思います。こうした背景を受け、ミウラには畜産業界以外でのさまざまな実績を活かして、価格競争に寄与するような画期的な製品を作ってほしいと期待しています。
※F値はレトルト食品の殺菌強度を規定するもので、121℃、1分がF値=1と定義されています。また、厚生労働省の発表する「容器包装詰加圧加熱殺菌食品」の規格基準によれば、pHが4.6を越え、かつ、水分活性が0.94を越える容器包装詰加圧加熱殺菌食品では、中心部の温度を120℃で4分間加熱するか、または、これと同等以上の効力を有する方法で殺菌しなければならないことになっています。
なぜ、ミウラが食品機器を製造できるのか。その理由は、50年以上にわたりボイラを追求することで得た「熱」と「水」の技術にあります。この熱と水の技術を組み合わせることで、今ではミウラはレトルト食品の各調理工程に求められる機器を提供しています。
「解凍」から「加熱調理」、エヌチキン様に導入いただいた「冷却」に「殺菌」、そして「殺菌後の冷却」まで。おいしさや安全性はもちろん、管理の省力化や作業の効率化まで意識した多彩なソリューションをご用意。ラインの最適化にお悩みのお客様は、ぜひミウラにご相談ください。