三浦美術館大賞展
これまでの特別企画展
■三浦美術館大賞展 審査を終えて
ごあいさつ 総評 審査を終えて 受賞作
初めての三浦美術館大賞である。公募点数千二百点余り、レベルの高い公募展であった。抽象作品、具象作品共半々の出品であった。もう少し現代的な作品の応募も欲しい様な気がした。しかし熱気溢れる作品群は見事であり、賞等を選ぶ折には難しく執拗に丁寧に見た。十号の作品とは言え迫力は皆十分でした。全国にはこれ程絵に対する情熱を持っている方々がおられる事に改めて驚かされました。この三浦美術館大賞展が瀬戸内の美意識を高め、一つの渦の中心となり全国に広がる波動となることを期待しております。

名古屋芸術大学教授 創造作家
原田 久

この審査では具象・抽象を問わず多くの作品に触れて、創造の原点に戻ったような新鮮さと作者層の厚さを感じました。佳作にも力作は多く伸びやかに対象を描いた『ゆ・れ・て』や幻想的な『雲で遊ぶ唐子』、ユーモラスな『蛙』は自由な発想で印象に残る作品でした。応募作品を総合的に見て再認識するのは現代の日本のセンティメントは「優しさ」だということです。特別賞『時空』では「空」は地球の原風景らしい非現実な風景で、中央で砂時計を想起させる装置が「時」を刻みます。そこに棲息するのは絵本のキャラクターのような小動物たちです。ここにはシュールレアリズムの破壊的・転覆的要素は皆無で、心優しい非現実が形成されています。
それは大賞『風の吹く日』にも言えます。課題の「火と水 命を産むエネルギー」を見事にイメージ化したこの作品では、水は生命誕生の海(宇宙とのつながりを想起させる)で、水底にはエネルギーの源の火が、燃え盛る炎ではなく揺らめく蝋燭の火で描かれます。蝋燭は祈りの炎・祈りの行為を想起させます。時間的空間的に大きな拡がりをもつ背景に、差し伸ばされた手は、一転して私たちの日常生活やテクノロジーを生み出す行為という生活空間を想起させ、一気に絵は重層的になります。グラフィティのように描かれた舟は人間の新しい船出、現代版ノアの方舟ともいえます。壮大なテーマに繊細なイメージをさりげなく重ねて抒情空間を作り上げた秀作です。

青山学院大学講師 インディペンデント・キュレーター
野中雅代

故三浦保会長は、マケドニアの画家、キロ・ウエルデン氏や私と国際展に毎年出品していた仲間でした。年齢の差こそあれ、私達は熱心に、そしてよく美術について論じ合ったものです。不思議な縁で、三浦美術館大賞展の審査に協力できましたことを光栄に思っております。と同時に、カルチャー時代といわれる昨今の風潮の中でコレクティビズム(集団主義)を越えた独自の作風と真撃で密度の高い作品が数多く寄せられたことにも驚きました。その中でも特に、課題部門のエネルギーの解釈が私の興味を引きました。と申しますのは、概して、エネルギーという課題から受けるイマジネーションとは、ともすれば自然を共有する「人間力」の勇ましくて、力強い外的表現にとどまりがちですが、若いアーティストの良質の作品の中には、自然の中に「生かされている人間」というイデアの瑞々しい発見がありました。エコロジー的想意に内包される静謐で謙虚な自省的表現に出逢うことができたということです。20世紀から敷衍し、今世紀はじめの若いアーティストの作品群に予感と人間のエゴイズムから離れた豊かな感受性のメッセージを感じました。

画 家
西村富彌

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